米国上院は5月8日、ステーブルコインを規制するための法案「GENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for US Stablecoins)」の採決を行ったが、民主党議員の反対により否決された。反対の背景には、ドナルド・トランプ前大統領と仮想通貨業界との深い関係があるとされ、共和党側がこれに対する対策を講じていないことが主な懸念点とされている。
採決では賛成48票、反対49票という僅差で否決されたが、与党院内総務ジョン・スーン氏が再審議を提案し、数日以内に再投票の可能性が浮上している。関係者によれば、共和党はトランプやその政権関係者による暗号資産投資を制限する修正には応じない見通しであり、その理由として「議会の憲法上の権限外である」と主張している。
一方で、両党の議員からは、条文内容の明確化や懸念の解消に向けた調整を求める声も上がっており、一定の進展が期待されている。さらに、政治資金団体フェアシェイクに関係する「シダー・イノベーション財団」は、上院に対し「政治的駆け引きを避け、速やかに法案を可決すべき」と警告している。
法案への懸念を強めたのは、トランプ氏が関与する暗号資産プラットフォーム「World Liberty Financial」とそのステーブルコイン「USD1」の存在である。特に、このトークンの保有者がトランプ氏との専用ディナーに参加できる仕組みなどが、「ホワイトハウス史上最大の汚職スキャンダル」として批判されている。民主党はすでに、政権関係者やその家族がミームコインから利益を得ることを禁じる法案を提出しており、議会での議論はさらに加熱する見通しである。
※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
Cointelegraph「What are the next steps for the US stablecoin bill?」
コメント
ステーブルコイン規制を巡る米議会の動きは、単なる金融政策の枠を超え、政治的な利害が複雑に絡み合っています。特に、トランプ氏の暗号資産への関与が明らかになる中で、法案の中立性や透明性が問われている点が注目です。規制の必要性は多くの専門家が認めていますが、特定の人物の利害と切り離して議論されなければ、公平な制度構築は難しいでしょう。今後の採決結果と、それに伴う市場や政治の反応に注目していく必要があります。