OpenAIのCEOサム・アルトマンが主導するデジタルIDプロジェクト「World(旧称:Worldcoin)」は、アンドリーセン・ホロウィッツやベイン・キャピタル・クリプトなどから1億3,500万ドルの資金調達に成功した。同社はこの資金をもとに、米国内6都市を含むグローバルな虹彩スキャン端末「Orb」の設置およびインフラ拡張を進めると発表している。

同プロジェクトでは、個人の虹彩情報をスキャンし、「人間であることの証明(Proof of Personhood)」を実現するWorld IDを発行。現在までに160以上の国と地域で1,250万人以上に配布されたとされる。

しかし、Worldは複数の国で法的な逆風に直面している。ブラジルでは、仮想通貨による金銭的インセンティブが「本人の同意を適切に得ていない」として、国家データ保護機関(ANPD)が2024年1月にサービス停止を命じ、3月には正式に禁止措置が維持された。違反が継続すれば1日あたり約8,800ドルの罰金が科される可能性もある。

インドネシアでも、5月4日に通信・デジタル省(Komdigi)が一部子会社のライセンス登録違反を理由に営業停止命令を発出。現在調査が進行中である。また、2024年12月にはドイツ・バイエルン州のデータ保護機関が「簡単に生体データを削除できる手段の提供」を求めて是正勧告を出している。

※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
Cointelegraph「Sam Altman’s World raises $135M from Andreessen, Bain, to expand network」

コメント

Worldcoinが掲げる「個人の証明」というコンセプトは画期的ですが、各国での規制や倫理面の議論が浮き彫りとなっています。生体データを引き換えに仮想通貨を提供するモデルに対しては、プライバシー侵害やインフォームド・コンセントの欠如といった懸念が出ています。技術的な進化と倫理的な責任のバランスをいかに取るかが、今後の成否を分けるカギとなりそうです。