分散型金融(DeFi)は今、自動化という進化の波に直面している。AIエージェントは24時間稼働する市場で流動性管理、利回り最適化、取引実行などの役割を担い、急速に主役の座を占めつつある。しかし現在のDeFiインフラは依然として手動承認が必要な従来型ウォレット(EOA)に依存しており、この構造が重大なリスクを招いている。
特に注目すべきは、AIに操作を委ねることで「意図しない取引」や「悪意ある自動化」によって資産が奪われる危険性が増す点である。2024年にはTelegram上のBot「Banana Gun」の脆弱性を突いた攻撃で約563ETH(約190万ドル)が失われ、さらに別の事例でも100,000ドル超の被害が発生している。
こうした事故の背景には、ウォレットの構造的な制約がある。現在主流のウォレットは「取引を署名して送信する」だけのシンプルな設計であり、AIエージェントによる操作を制御する手段がない。今後、セッションベースの権限設定、暗号検証、リアルタイムのアクセス取り消しなどを備えた「プログラム可能なウォレット」が不可欠になる。
また、チェーンやプロトコルの断片化を解消するために、クロスチェーンでの権限同期が可能な「ユニバーサルキーストアプロトコル」のような仕組みも求められる。DeFiが金融機関からの信頼を得るためには、こうした検証可能な自動化インフラが前提条件となる。
AIエージェントの活用を前提とするならば、DeFiにおけるユーザー主権と透明性を守るためにも、ウォレットは単なる取引ツールではなく、「インターフェースかつOS」として再設計される必要がある。
※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
Cointelegraph「AI agents are coming for DeFi — Wallets are the weakest link」
コメント
AIによる自動化が進む中、DeFiは大きな転換点を迎えています。今後は人間の手を介さずに取引を行う時代が到来するかもしれませんが、その裏ではセキュリティや信頼性への懸念が高まっています。特に、今のままのウォレットでは「誰が、いつ、何の目的で操作しているか」が把握できず、リスク管理が困難です。安全な自動化と利便性の両立には、ユーザーが理解し納得できるインフラ整備が急務となっています。今後のDeFi発展には、こうした「見えない守り」が鍵を握るでしょう。