米国の太平洋領土である北マリアナ諸島の上院は、知事が拒否権を行使して否決したステーブルコイン法案を再可決し、下院での採決に進めることを決定した。対象となるのは、同諸島のティニアン島がインターネットカジノのライセンスを発行し、「ティニアン・ステーブルトークン(MUSD)」を発行・管理・償還することを可能とする法案である。
5月9日、上院は7対1でアーノルド・パラシオス知事の4月11日付の拒否権を覆す決議を可決。今後は下院(20議席)での3分の2以上の賛成によって正式な法案成立が決まる。迅速に承認されれば、ティニアンは米国内で初めて公的にステーブルコインを発行する自治体となる可能性がある。同様にステーブルコイン発行を目指すワイオミング州との競争も注目される。
知事は法案に対し、「法的懸念があり、憲法違反の可能性がある」と述べていたが、地元の共和党上院議員らはこれを「経済の多様化に必要不可欠」として推進。MUSDは、米ドルに連動し、現金と米国債によって裏付けられる設計で、ノーザンマリアナ諸島の首都サイパンを拠点とするMarianas Rai Corporationが技術インフラを担当する。ブロックチェーン基盤には、Bitcoin Cash ABCの分岐であるeCashネットワークが採用されている。
法案支持者は、「物理的な施設を必要とせず、環境負荷も少ない新たな収益源」としてステーブルコイン導入の意義を強調。一方で、民主党議員からは「取り締まり体制の不足」や「違法利用の懸念」が指摘されている。
※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
Cointelegraph「Stablecoin bill gets second chance with Northern Mariana lawmakers」
コメント
ティニアン島の取り組みは、ステーブルコインを通じた地方経済の再建を目指す先駆的な事例です。特に人口2,000人規模の島で、現金裏付けのデジタル通貨を発行しようという構想は、観光業依存からの脱却を模索する動きとも言えます。ただし、規制や管理体制が整っていなければ、違法利用や不正行為の温床にもなりかねません。地方発のステーブルコインが新たな経済モデルとなるか、今後の進展に注目です。