国際決済銀行(BIS)は、2024年第2四半期における暗号資産による国際送金の総額が約6,000億ドルに達したとの報告を発表した。対象となったのは、ビットコイン(BTC)、イーサ(ETH)、およびステーブルコインのUSDt(テザー)とUSDCであり、大部分が投機的な動機による送金であると指摘されている。
BISはこの報告の中で、暗号資産のフローは「世界的な資金調達環境」や「リスクテイク傾向」と密接に結びついており、伝統的金融との相互依存性が高まっていると分析している。特に、資金調達が引き締まる局面では暗号資産のフローも減少する傾向があるとして、暗号市場が従来の金融市場の影響を強く受けている点を強調した。
一方で、ビットコインの少額取引やステーブルコインの利用には実需の側面もあるという。具体的には、物価高による法定通貨の信頼低下や、従来の銀行による高額な送金手数料の回避手段として、暗号資産が国際送金の代替手段として選ばれているケースも見られる。特に、先進国から新興国への送金需要においてその傾向が強い。
地理的な制約が少ない暗号資産の特性もあり、米国と英国はBTCおよびUSDCを利用したクロスボーダー送金の約20%を占め、ETHに関しては30%に達する。さらに、USDtではロシアとトルコが全体の12%以上を占めており、高インフレ国でのステーブルコイン利用が顕著である。
BISはこれらの動向を踏まえ、暗号資産およびDeFiの資本規模と投資家数が「臨界点」に達しており、金融システムの安定性と富の格差にリスクをもたらす可能性があると警鐘を鳴らしている。
※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
Cointelegraph「Crypto speculation dominates $600B cross-border payments: BIS report」
コメント
BISの報告は、暗号資産が単なる投機対象にとどまらず、世界的な送金インフラの一部として定着しつつある現実を示しています。特に法定通貨の信頼性が揺らぐ国々では、ステーブルコインやビットコインが現実的な送金・決済手段として活用されています。一方で、暗号資産市場が従来の金融市場と密接にリンクし始めていることから、資金流入やボラティリティがマクロ経済の影響を強く受けるリスクも見逃せません。長期的には規制と技術の進化がカギとなりそうです。