米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長は、2025年5月12日に開催されたトークン化とデジタル資産に関するラウンドテーブルにて、「ブロックチェーン技術は新たな市場活動を可能にする潜在力を持つ」と述べ、これまでの執行優先の方針から、明確なルール整備へと転換する意向を示した。
アトキンス氏は、従来の規制枠では想定されていなかった新たな証券の形態や市場活動が、ブロックチェーンを通じて広がる可能性に言及。「今後は臨時的な執行措置ではなく、SECが保有するルール制定や解釈、免除権限を活用し、業界に即した規制基準を整備していく」と語った。
具体的には、証券に該当する可能性のある暗号資産に対して「明確で合理的なガイドライン」を策定するほか、証券・非証券が混在する商品をブローカーが取り扱えるようにする方針を掲げている。
これは、前任のゲーリー・ゲンスラー委員長による「執行による規制」手法とは対照的であり、業界関係者から歓迎される姿勢である。
また、アトキンス氏は証券のトークン化について、アナログからデジタルへの音楽メディアの進化になぞらえ、「相互運用性の向上が消費者と米経済に大きく貢献してきた」と強調した。
すでにブラックロックやフランクリン・テンプルトンなどの資産運用会社が、米国債をトークン化したファンド(BUIDLやBENJI)を展開。ロビンフッドも欧州向けにトークン化証券取引のブロックチェーン構築を検討している。
トークン化された証券は、決済の迅速化や金融インフラ依存の低下、アクセス性の向上といった利点により、非流動的な資産クラスの流動性向上にもつながると期待されている。
RWA.xyzによると、リアルワールドアセット(RWA)のオンチェーン残高は5月時点で226億ドルに達し、過去30日間で7.6%増加。ステーブルコインを除いてもこの規模であり、テザー(USDT)単体で1,506億ドルの時価総額を有している。
※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
Cointelegraph「SEC Chair: Blockchain ‘holds promise’ of new kinds of market activity」
コメント
SECがついにブロックチェーン時代に本格的に歩を進めた形となります。ポール・アトキンス委員長の方針転換は、これまでの曖昧なルールに悩まされていた暗号資産業界にとって大きな朗報です。明確で柔軟なガイドラインが整備されれば、企業は安心して新たな商品やサービスを展開できるようになります。特にトークン化された証券は、金融の効率化と民主化を促進する要素として注目されています。今後のSECの具体的な政策に引き続き注目していきましょう。