ステーブルコイン発行企業Tetherのブラックリスト処理における遅延により、7,800万ドル以上の不正資金が凍結を逃れていたことが、ブロックチェーン監視企業AMLBotの最新レポートにより判明した。

報告によれば、TetherのUSDTブラックリスト処理はEthereumおよびTron上で複数のマルチシグネチャ取引を経て実行されるが、このプロセスには最大で数十分のタイムラグが生じる。例えば、Tron上ではブラックリスト候補のアドレス提出から実際の凍結までに44分間の遅延があったという。

この「凍結前の猶予時間」は、熟練した不正ユーザーにとって資金を迅速に移動・洗浄する絶好の機会となっている。AMLBotによると、Ethereumではこの遅延中に2,850万ドル、Tronでは4,960万ドルが移動され、合計7,810万ドルが凍結を回避した。

Tether側はこの報告に対し、遅延は単なる欠陥ではなく「マルチシグによる慎重なガバナンスモデル」の結果であり、単独の意思決定による凍結を防ぐための仕組みであると説明。また、2,700億ドル以上の凍結実績を強調し、「今後は悪用の余地をなくすための改良を進める」としている。

※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
Cointelegraph「Tether blacklist delay allowed $78M in illicit USDT transfers: Report」

コメント

Tetherの凍結プロセスに時間差があるという今回の報告は、ステーブルコインの運用におけるセキュリティ課題を改めて浮き彫りにしています。多くの資金がこの「猶予時間」を利用して不正に移動されたことは事実であり、ユーザーや規制当局にとっては重要な警鐘です。ただし、Tether側もマルチシグによる慎重な対応を重視しており、今後の改善が期待されます。透明性とスピードのバランスが問われる局面といえるでしょう。